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第151話 同じ傘の下

Author: 花柳響
last update publish date: 2026-09-11 06:00:52

 研究棟へ入る前日、朝から雨が続いた。

 B3の鍵を使うには、紗英が警備記録を一時的に止める必要がある。連絡は、鍵に結ばれていた小さなタグへ届いた。

 〈明日、午後八時。搬出口〉

 それまで私は、高城旅館で宿帳の複製を確認していた。

 帰ろうとした頃、雨脚が急に強くなった。征臣の車は渋滞で遅れ、蓮が玄関で青い傘を開く。

「裏の駐車場まで送るよ」

 曲がっていた骨は直されていた。

「修理したんですね」

「鷹宮に『いつ壊れてもおかしくない』って言われたからな」

 二人で入るには少し狭い。肩を濡らさないよう寄ると、蓮が歩幅を落とした。傘の縁から落ちる雨が、石畳へ細い線を作る。

「昔も、こうやって歩いたな」

「覚えていません」

「分かってるって」

 即座に返したあと、蓮は持ち手を握り直した。

「思い出せって意味じゃない」

 雨音に言葉が削られ、続きが聞こえにくい。

「鷹宮のところが苦しくなったら、旅館へ来ればいい。部屋はある」
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